会社の近くには幾つもの飲食店があるけれど、私の入社する以前から社員達が馴染みとしてきた場所が昼と夜でそれぞれある。お昼は家族経営されている美味しい町中華Kで、夜は季節のものを洒落ていない形で提供してくれる居酒屋N。今回はまだデビュー前の二人とNの暖簾をくぐった。とはいえ、私も数年ぶりなのに加えいつも上司に連れてきてもらっていたから、こんな形で利用できるようになったことは、会社で過ごしてきた歴史とも重なって少し感慨深い。30代、40代、50代での仕事を離れた会話は面白くて、気付けば5時間が経過。時計を二度見しては慌てて電車に飛び乗った。連れてきてもらっていたときはもう少し若かったこともあり、Nの真の良さが分かっていなかったけれど、今ならおつまみや接客、日本酒の品揃え等々から、その魅力がよく分る。昼と夜、社員たちの通ってきた場所を自然と受け継いでいることが、アイシャセイシンにも繋がっているような気がして、少しだけ胸を張るのだった。
電車で1時間ほどかかる目的地が自転車だと30分ほどで着くと聞き、新しい自転車を新調した今は後者を選択。天気もよく絶好の自転車日和となった。前を走る人は既に何度も通った道である為、ここから先は緩い坂が続くよとか、ここら辺は道が広いから自転車の道走ろうとか、都度適切な一言をくれる。前回は以前暮らしていた街だったことと何度か車で通った道だったこともあり、行き帰りする道にときめきはなかったけれど、今回は違う。走り進めるごとに変わっていく街や住宅の景色が初めての景色である為、歩いているのとも違う速度でその場所の空気感ごと自分のなかに入ってきて面白かった。帰る頃にはすっかり夜の空。それでも知らぬ街のスーパーで買い物をし、遅くなった帰宅後にエビフライを揚げてタルタルソースを作れるほどテンションの上がるコースだった。
午後のラジオから流れてきたクリス智子さんと麻生要一郎さんの会話が心地よくて、ナポリタンを作ったり夕飯の後片付けをしたりしながら、夜の台所で聞き逃し配信を2回も繰り返した。ハナレグミの「家族の風景」を選曲されていて、今まで何度となく聴いてきたのに、こういう形で耳にすると改めて染み入ってしまう。
キッチンにはハイライトとウィスキーグラス どこにでもあるような家族の風景
永積さんの歌声にのせて浮かんでくるリアルな情景。伝わってくるトーンや今のキャリアに至るまでの話のなかに、何か感じるものがあったのか、あまり知らない方である麻生さんがこれを選曲されたことは、なぜか私のなかでとてもしっくりときたのだった。