スイートリトルライズ

小説と異なる設定をしている部分については違和感があったし(些細なことかもしれないけれど人となりを表しているように思えたので)、大森さんは聡のイメージでは無かったけれど、瑠璃子の言動や要望に戸惑う表情はとても自然で、「あ、聡」と思える瞬間が幾つか繰り返された。玄関やリビング、寝室の風景は中谷さん演じる瑠璃子の佇まいに合っていて、それは私が想像していたよりも遥かに「作家」という作品を作りだす人のものらしかったし、小説はイメージの世界で私のそれはあまりに貧弱だから目に入る映像で容易く塗り替えられてしまう。だけどべったり塗られても、私の感じる小説の世界観は壊されていなかった。より具体的になったように感じたのだった。
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愛のサンセットクルーズ

羽田空港の離発着も出来たばかりの東京ゲートブリッジも船の上からは少し遠かったので、海風に吹き飛んでいく一番の歓声はレゴを積み重ねたような近くの景色に向けられる。乾杯の後、おめでたい空気に包まれて出航したサンセットクルーズは私達にも二重の喜びを与えてくれた。数年前、飲んだ席の片隅で酔いながら語っていた夢をきちんと実現させた同僚。それがどんな言葉よりも、彼女への気持ちに対する一番の表現であるように思えた。
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未知数の組み合わせ

ドライフルーツはてっきりワインに合うものと思っていた。高知土産の栗焼酎と乾燥され旨味が凝縮されたパイナップルの組合せは、だから意外性をもって歓迎されたのだった。焼酎のイメージだけなら、珍味や癖のある食べ物と合わせたいと思っていたけれど、栗焼酎のまろやかさと上品なアルコールの強さが、酸味のあるパイナップルと合わせる気にさせ、私達の正解を導きだした。子供の頃のように、毎日が発見の連続では無くなってきているから、こんなことでも声を大にして言いたくなるような発見なのだ。未知数の組合せが存在するからこそ、尚更そう思う。
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Lサイズのブルー

別の日に探していた時は散々見て悩んで、どれも決め手がなかったのに、気まぐれに寄ったデパートではすぐに選べた薄手のセーター。サイズやデザイン違いを背丈が同じ本人の代わりに幾つも着てくれた親切な店員さんのおかげで、より具体的なイメージを得て手に入れることができた。好みそうなものより、自分では選ばないであろうものを選ぶ、という考えはいつの間にか私にも浸透してきている。混じりけのないブルーと、Vの襟元。店員さんはMサイズで充分だったのに、交換することを期待しながら渡したLサイズはぴったりで、「すごくいいね」と喜んでくれたのは、膨れてきたお腹を充分隠してくれたからだった。
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同じフィールド

昨日、気持ちよく吹き抜けた5月の風に蝶のカイトもふわりとのっていった。裸で日光浴する人、昼寝する人、読書する人、ここに来るたび思い思いに過ごす姿があちらこちらに。それでも青い空の下、目に映るフィールドは一緒だった。家族や友人や1人でと、幾つもの単位でそれぞれ好きなようにして、最終的に、あるいはどこかで混ざり合って同じ場所にいる私達の休日を見ているようだった。
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こどもがえり

先に訪れていた友人からは「井戸を見てきて」と言われ、雨上がり、得意気な面持ちで連れていってもらうも、それより私達を興奮させたのは昔の佇まいをそのまま残したような近所の駄菓子屋さんだった。買いにきていた近所の少年にお薦めを聞いては、親戚の叔父さんに甘えるみたいにあれやこれや買ってもらい、型抜きに一喜一憂したり、酢だこさん太郎の甘酸っぱさに懐かしく悶えてみたりと、すっかり童心に返っていたのだった。思わぬ盛り上がりで子供の夏休みを思い出すような昼下がり、カウンター越しも賑やかな男子料理と、2階でひっそり行われたガールズトークは年相応に。
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谷間の2日間

昨日今日と谷間の出勤日2日間。平日だけど世間も会社も浮き足だっている感じに、いつも夏休みの登校日とかプールに通う時のような感覚が蘇ってしまう。仕事は怒涛の忙しさだけど、会社の人達と休みの間に顔を合わせているという思いがいつもの出勤とは違いを際立たせる。街を歩いていても緑が眩しく感じる時季がいつの間にか特に好きな季節になっていた。だから「ゴールデンウィーク」というのが、登校日のあった時よりもずっと心持を見透かされたように響く。
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観賞のエネルギー

会場から出た後、しばし放心状態で座り込む。生きていく為に創り続けている、とでもいうようなエネルギーがほとばしった作品の数々にただ圧倒された。散々迫ってくる絵画の最後に展示されていた作品は、それまでの過程があってこその伝わるテーマだったし、出口手前のオブジェには、よく晴れた日に光を浴びようと、チューリップが茎や花を太陽の方向に「もっともっと」と、思いきり伸ばしていた姿が重なる。愛、生、死、自分であること、命を失っても尚、存在し続けること。魂をこめて創られた世界は観る方にもエネルギーがいる。
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シンプルなこと

向こうの景色に続く稜線は、前後でその色が徐々に変化し、先日観た映画に出てくる海の色を連想させた。先へ進めば再び溢れるほどの緑が頭上一面を覆う。アップダウンを繰り返し、吐き出すように日々を語り、汗を流す。幾つか山を越え、空腹でおさめたおむすびは何にも勝るご馳走だった。頻繁に山歩きをする人は、背負う荷物に優先するべきものが分かっているから、その形はごくシンプルになるということを話した。時に豊かに、あるいは息苦しくも余分なものが多い人生だから、見習いたい姿勢だった。
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6時間の韓国旅行

友人夫妻との新大久保ツアーにて、電柱のハングル文字にさえも敏感に反応してしまう男子達。食事をしても化粧品を見てもコーヒーを飲んでも、彼等より数歩遅れて店を出るたび肩を寄せあう姿は既に見えず、溶け込んでいった街へとうろうろ視線をさ迷わせることに。追いかけ探し続けながら、夢中でガイドし、されている2人の後ろ姿が可笑しくて、私達はずっと笑っていた。別れ間際にさよならの挨拶をすることなく雑踏のなか佇んで、6時間のツアーが本当の旅の終わりのようだった。
author: kikurair
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